カシマスタジアムは2018年3月、5年ぶりに芝生を全面張り替え、夏芝(暖地型)の新品種「シーショア・パスパラム改良型」を採用。通年での常緑化とサッカー開催の柔軟性向上を同時に実現し、芝生管理ノウハウの事業化にも乗り出しました。
「夏芝って冬に枯れないの?」「なんで今、カシマは芝を変えたの?」




気温上昇と試合密度の増加に対応するための大胆な戦略です。夏芝を改良品種で通年管理することで「芝の回復待ち」から「即張り替え」へ。芝生を“使い捨て”の部品と捉える発想の転換が、スタジアム稼働率を高める鍵です。
通年夏芝で稼働率向上、芝張りから芝ビジネスへ
鹿島アントラーズの本拠地・カシマスタジアムは2018年3月2日、芝生の全面張り替えを発表。5年ぶりの刷新で「シーショア・パスパラム改良型」という夏芝(暖地型芝草)の新品種を採用しました。これにより、通年でのピッチ常緑化が可能になり、サッカーだけでなく多様なイベント開催も見込まれます。
従来は「ケンタッキーブルーグラス」を中心とした冬芝(寒地型)を使用。だが、夏の高温で劣化が激しく、秋以降の回復にも時間がかかっていた。今回、夏芝一本で通年管理する「第三の道」を選び、試合中傷んでも即張り替えられる体制を構築した。
- 芝生の全面張り替え日
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2018年3月2日
- 芝種名
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シーショア・パスパラム改良型(暖地型・夏芝)
- 採用理由
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夏の暑さへの耐性、短期間での回復力、冬の茶色化を保温シートで克服
- 張り替え方法
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ビッグロール工法(長さ7m×幅1mのロール芝を使用)
この取り組みを支えるのが、「ターフプロジェクト」と銘打ち、IGM株式会社(鹿島総合芝管理)が運営する芝生管理の高度化・事業化戦略です。九州・北海道のスタジアム管理も手がける同社は、カシマの事例を「日本全国の芝生施設に提供可能なノウハウ」と位置づけています。
芝生が傷んでも「養生して待つ」のではなく「すぐ張り替える」ことで、多試合・多イベント対応力が大幅に向上。2020年東京オリンピックでの短期集中開催にも対応可能とされています。



夏芝の弱点を克服する独自技術
「シーショア・パスパラム」はもともと耐塩性・耐暑性に優れた夏芝で、南アフリカ原産の暖地型芝草です。コウライシバやバミューダグラスよりも茎葉が柔らかく、直立性が高いため芝目が付きにくいのが特長。ハワイやグアム、沖縄のゴルフ場で実績があります。
「改良型」の改良点は公表されていませんが、耐寒性や冬季の緑色保持期間の延長が狙われていると考えられます。夏芝の弱点だった「冬の枯れ」を品種改良と環境管理でカバーした点が画期的です。
保温シートで「冬の枯れ」を防止
冬場の茶色化を防ぐため、長さ79m×幅24mの大型保温シートをピッチ全面に被せる養生システムを導入。このシートは保温性だけでなく通気性も高く、凍結防止と湿気調整を両立します。
IGM社長のインタビューでは、「芝は生き物。日々の観察と手入れが肝要だ」と強調されていました。特にゴール前など損傷しやすいエリアは試合後すぐに修復を実施。その上で「傷んだら即張り替え」という発想の転換が、通年利用を可能にしています 鹿島復権への相棒は最強の芝生。構想6年、ターフプロジェクトって? – Jリーグ – Number Web。
ビッグロール工法でスピード張り替え
従来の芝張りは数ヶ月の養生期間が必要でしたが、カシマスタジアムは「ビッグロール工法」を採用。長さ7m、幅1mの大型ロール芝を用い、10日間で全面張り替えを完了。6週間で養生を終える高速対応が可能になりました。
他競技場との芝生管理比較
カシマスタジアムの「夏芝一本」常緑化は、国内では非常に珍しい試みです。一般的な国内スタジアムの芝生管理手法と比較してみましょう。
| 管理手法 | 採用例 | 芝種の組み合わせ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 夏芝一本で通年常緑化 | カシマスタジアム | シーショア・パスパラム改良型(暖地型) | 夏の回復力に優れ、即張り替えで稼働率向上。冬は保温シートで対応 |
| 冬芝メインで通年管理 | 旧カシマスタジアム、冷涼地スタジアム | ケンタッキーブルーグラスなど寒地型芝草の混合 | 寒冷地向け。暑さに弱く、夏場の維持が困難 |
| ウィンターオーバーシーディング | 旧国立競技場、吹田スタジアム | 夏:バミューダグラス/ティフトン 冬:ペレニアルライグラス | 春秋に芝種切り替え。養生期間が長く、開催制限あり |
| ハイブリッド芝 | 神戸ノエスタ、埼玉スタジアム | 天然芝+ポリエチレン繊維補強 | 耐久性が飛躍的に向上。99%天然芝で国際試合認可可 |
「オーバーシーディング」は、秋に冬芝の種をまいて夏芝の上に生育させる方法。夏芝が枯れても冬芝が生えていれば常緑を維持できますが、種まき→発芽→成長までに数週間の養生期間が必要です。その間、スタジアムの使用が制限されます。
カシマスタジアムの取り組みは、これらの制約を避けようとする挑戦といえます。特に2020年東京オリンピックでの短期連続開催を見据えた「回復力重視」の設計が、従来の常識を覆しています。
芝生選びの基本は「環境に合った品種」ですが、カシマの事例では「環境に合わない芝でも、管理技術とインフラでカバーする」という逆転の発想が見られます。詳しくは「芝生の選び方」をご覧ください。



ホーム開幕戦で確認された芝の状態
2018年3月3日の鹿島アントラーズ vs ガンバ大阪戦(ホーム開幕戦)での芝状態は良好でした。選手も躊躇なくダッシュや競り合いを行い、試合後も土のえぐれや芝の剥離はほとんど見られませんでした。
一部で色の薄い箇所もありましたが、全体的に濃い緑色を保っており、ケンタッキーブルーグラス時代と同等以上の状態に見えました。
選手の足さばきに違和感がなく、急停止・方向転換でも芝がめくれ上がる様子なし。プレーへの支障は確認されませんでした。
グラウンドキーパーが芝の状態を細かくチェック。損傷箇所があれば即修復する体制が確認されました。
この開幕戦は、新品種と新管理手法の実用性を示す重要なテストでした。3月上旬という時期にもかかわらず「通年常緑」が実現している点に、専門家の注目が集まっています。
芝生の手入れは季節ごとに変化しますが、3月は張り替えや補修のベストシーズン。カシマの例も、まさにその時期に合わせた戦略的タイミングでした。3月の芝生管理についての詳細は「芝生の手入れ3月の作業は?」で解説しています。



現地で撮影した写真


















まとめ:芝生は“使い捨て”ではなく“交換部品”へ
- カシマスタジアムは2018年、5年ぶりに芝生を全面張り替え
- 新品種「シーショア・パスパラム改良型」で夏芝一本の通年常緑化を実現
- 保温シート・ビッグロール工法・専用圃場で管理の高速化・柔軟化
- 「傷んだら張り替え」の発想でスタジアム稼働率を向上
- 「ターフプロジェクト」を通じ、芝生管理ノウハウの事業化も推進
冬場の完全な緑色保持や、長期間の耐久性、コストパフォーマンスなど、まだ検証すべき点はあります。吹田スタジアムのように、新設初年度は芝のはがれが見られる例もあるため、今後の管理状況が注目されます。
- カシマスタジアムの芝は冬も緑なの?
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新品種の「シーショア・パスパラム改良型」は耐寒性が強化されており、さらに大型保温シートを被せて養生することで、冬季も緑を維持する「通年常緑化」を目指しています。
- 芝生の全面張り替えにどれくらいの期間がかかった?
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ビッグロール工法を用いて10日間で張り替えを完了し、6週間で養生を終えました。従来の方法に比べて大幅な短縮です。
- なぜ冬芝から夏芝に変えたの?
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旧芝のケンタッキーブルーグラス(冬芝)は夏の高温に弱く、秋以降の回復に時間がかかっていました。多試合に対応するため、暑さに強く回復の早い夏芝に変更したのです。
- 新品種の芝草「シーショア・パスパラム」とは?
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南アフリカ原産の暖地型芝草で、耐塩性・耐暑性に優れています。茎葉が柔らかく、直立性が高いのが特徴。改良型は耐寒性や緑色保持を高めたと推測されます。
- 「ターフプロジェクト」とは何ですか?
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カシマスタジアムの芝生管理ノウハウを企業化・一般化し、他のスタジアムや施設に提供するビジネスプロジェクトです。IGM株式会社が運営しています。









