ノエスタ神戸で初採用!天然芝を繊維で補強した“ハイブリッド芝”で耐久性が上がる?

天然芝限定だったJリーグがハイブリッド芝を解禁、ノエビアスタジアム神戸で初採用されます。秩父宮ラグビー場の芝が慢性的に悪い話、また東京オリンピックを控え各国代表の事前合宿誘致のためスポーツ競技場の整備が始まっています。その中で注目されるのが人工芝やハイブリッド芝。天然芝をベースに繊維で補強したハイブリッド芝の構造とメリット、採用実績について調べました。

・2018/3/7 日本陸連が規定を改定しハイブリッド芝容認した件を追加。

天然芝普及を推進してきたJリーグ

Jリーグは芝生のマスコットキャラクター「Mr.ピッチ」を採用するなど芝生のイメージが強いスポーツ競技。実際、Jリーグ100年構想では「あなたの町に、緑の芝生におおわれた広場やスポーツ施設をつくること」を掲げ校庭やグラウンドが芝生化された学校は全国で2000弱に達しています。

Jリーグの公式試合は1993年の開幕以来、全て常緑の天然芝のピッチで行われています。明るい太陽の光に輝き、あるいは照明に映える緑のカーペットという舞台装置は、土のグラウンドで行われることが普通だった日本のスポーツに、新たな次元を開きました。
天然芝の推進:About Jリーグ:Jリーグ.jp

▼記念撮影でポーズをとる「Mr.ピッチ」
JリーグMr.ピッチ

天然芝規定していたJリーグのスタジアム基準

Jリーグにはクラブライセンス制度がありその中にはスタジアムなど施設基準も含まれます。J2で優勝しても、J1基準を満たす財務やスタジアムを持たなければ上がれない、それによって安定した運営を担保する仕組みです。

この競技用施設の規定で従来天然芝ピッチのみが認められていた所、2017年から「天然芝またはJリーグが認めたハイブリッド芝」に変更されたのです。Jリーグが認めるハイブリッド芝は具体的には「ピッチ全体が天然芝と5%以下の人工芝とを組み合わせたもの」と規定されています。

Jリーグでハイブリッド芝が認められた背景

競技は異なりますがラグビーの国際団体(サッカーのFIFAに相当)第22条 人工芝の使用に関する基準で天然芝以外の芝が認められるようになってきた背景がわかります。

ラグビーの試合は伝統的に天然芝の競技場で行われてきた。これは伝統という理由だけではない。理想的な状態の天然芝の競技場は、ラグビーの試合に最適だからである。天然芝によるフィールドは、最高レベルの国際試合に適した足場の確保、衝撃吸収性、ボールの弾み、トラクション(スパイクの引っかかり)、変形度や安定性のほか、景観的な美しさを実現することができる。その反面、このように理想的な天然芝にはマイナス面もあることは否めない。天然芝の性能特性を維持するためには、徹底的な維持管理体制が必要となるのである。

理想的な状態の天然芝は人工芝を上回りますが使用頻度が多すぎたり気候や競技場の設計、グラウンドキーパーの質など様々な理由によって天然芝が痛み、競技に適した状況ではないのに使い続けなければならないことがあります。天然芝のマイナス面です。

日本国内でもラグビーの聖地秩父宮ラグビー場の天然芝が試合頻度や高層ビルの陰で日照が少ないなどの理由で砂地化し毎年問題となっています。

芝がひどい?!“秩父宮ラグビー場”の芝生管理

2017.12.15

こうした背景の中、最高の天然芝 > ・ハイブリッド芝 >>>> 傷んだ天然芝という評価になり、欧州を中心にハイブリッド芝の採用が進みFIFAでも認可された国際状況を受けJリーグでもハイブリッド芝が解禁、という流れになったものと理解しています。

Jリーグの各クラブでは練習場などで試験採用されてきましたが試合会場としてはノエビアスタジアム神戸が最初の事例です。
ノエビアスタジアム神戸 ハイブリッド芝について ~ 国内スタジアム初のピッチ内敷設へ ~:Jリーグ.jp

人工芝・ハイブリッド芝の実績

人工芝、ハイブリッド芝は以前は以前は品質的に限界があったものの、現在では野球では東京ドームなどのドーム球場、アメフトではNFL、フィールドホッケー、サッカー、ラグビーなどメジャースポーツで採用されています。

芝生の用途と利用シーン

2017.10.11

一方サッカーではワールドカップカナダ大会の女子決勝が人工芝で行われ選手が男女差別だと抗議したように人工芝の導入は進んでいません。その代わり天然芝が主体で人工繊維で補強するハイブリッド芝が主流で欧州各国を代表するスタジアムで採用されています。

ハイブリッド芝を採用しているスタジアムを列挙するとドイツ ブンデスリーガのバイエルン本拠地「アリアンツ・アレーナ」、イングランド プレミアリーグのアーセナル本拠地「エミレーツ・スタジアム」、リバプール本拠地の「アンフィールド」、ユナイテッド本拠地「オールド・トラッフォード」、チェルシー本拠地「スタンフォード・ブリッジ」、イタリア セリエAのインテル、ACミラン本拠地「サン・シーロ」などが挙げられます。

欧州の強豪のスタジアムですから欧州チャンピオンズリーグ、UEFA欧州選手権、FIFAワールドカップなどで使用されハイブリッド芝は「トップレベルのプレイに耐える」という評価が定着していると言ってよいでしょう。

FCB、ハイブリッド芝を導入 – FC Bayern Munich

ハイブリッド芝の構造と効果・メリット

ハイブリッド芝は天然芝を3〜5%の人工繊維で補強したものです。95%が天然芝ですからハイブリッドという言葉のイメージと異なり天然芝が主体です。ワールドカップやチャンピオンズリーグ決勝でも使用された「デッソ・グラスマスター(Desso GrassMaster)」によると以下のメリットがあります。

  • 天然芝ピッチに比べ70~80%コストが下がる!(10年間のコスト費)
    (設計15年、実績21年)ACミランのホームサンシーロスタジアムは毎年全面5回張り替えていましたがグラスマスターに替えてから張り替えはなんと0回です!
  • 芝生ピッチが強いからケガがしづらい!
    芝が強いため、踏ん張ったときに滑らずひざへの負荷がかかりません。
  • 誰もが使えるピッチになる!
    ロンドンウェンブリースタジアムではサッカー、ラグビー、アメフトの他コンサートなどのイベントで使用されています。

ハイブリッド芝ではピッチの稼働率を1.5〜2倍に上げられ、また回復力に優れることから収益性が高いコンサートも開催しやすくなります。

稼働率を上げられるのはハイブリッド芝では芝が生長しながら人工繊維と絡むので剥がれにくく、芝が部分的に抉れるディボット(divot)ができづらい特徴、踏まれた芝が人工繊維に支えられて回復しやすい、縦に差し込まれた人工繊維による排水性の向上などの効果によるものです。

芝草の特性で言えば「耐踏圧性」、「すり切れ抵抗性」、「傷害からの回復力」が高く良い芝の状態が長く続きます。特に冬は低温下で芝草の生育が鈍り傷んだら回復しませんが痛みにくいハイブリッド芝では冬期2倍〜3倍使用できるとするメーカーもあります。

間近でハイブリッド芝を見てみる

2017ジャパンターフショーで東洋グリーンが扱っているハイブリッド芝「HERO(ヒーロー)」を触ってきました。FIFA,、World Rugbyなどの国際基準に適合しているスポーツターフです。人工ファイバーが高さ65mm、そのうち20mmが芝面に出てきます。

▼人工ファイバーを見つけられますか?中央下側の色が濃い数本が人工ファイバー
ハイブリッド芝のサンプル
基布に人工ファイバーを固定させたカーペットのような人工芝に天然芝を生やします。カーペットタイプにはスポットで補修したい場合部分的に張り替えられるメリットがあります。
ハイブリッド芝の下地
ハイブリッド芝の断面。表層はほぼ天然芝であることがよくわかります。
ハイブリッド芝の断面

日本陸連、規定改定しハイブリッド芝容認へ。大銀ドームで導入

2018年2月28日の大分合同新聞によると日本陸連は規定を改定し日本選手権や国際大会を開催できる公認競技場でハイブリッド芝の許可に踏み切ります。今まで第1種から第3種までの公認競技場で投擲競技に使うインフィールドは天然芝に限定されていました。

大分県は2019年ラグビーワールドカップに向け大分銀行ドームにハイブリッド芝の導入する方針。大銀ドームは陸上の第1種公認競技場でもあります。この背景にはラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」が耐久性に優れるハイブリッド芝を推奨しイングランド大会でも大半で使用され実績があること、ロンドンの陸上世界選手権でも使用されたこと、Jリーグでも規定を改定しノエビア神戸や日産スタジアムなど国内競技場でも導入が進むことなどの背景を踏まえたものです。
ハイブリッド芝 日本陸連が容認 大銀ドーム導入