メガソーラーの雑草対策に防草・芝生緑化の選択肢

太陽光発電を行うメガソーラーも稼働から数年が経ち雑草対策に頭を悩ませています。日経テクノロジーではメガソーラー特集で除草・防草・芝生を含む緑化など雑草対策を取り上げています。草刈り機による機械除草は1番高く、芝生緑化は永続性もあり長期的には1番低コスト。費用やメリット・デメリットに具体的に触れた良い記事なのでご紹介します。

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「緑地雑草科学研究所・理事に聞く」シリーズは2018年1月現在第6回まで進んでいる。福井県鯖江市の緑地雑草科学研究所は雑草に関連した博士号を持つ専門家複数が所属する雑草問題を扱うNPO。第1回〜3回が総論で第4回からが防除手法ごとの各論。

メガソーラーの雑草リスク10点

世界的に見ると「雑草害」は虫害、病害、鳥害、獣害と並ぶ「5大生物害」の一つ。病害虫の発生源である雑草害は日本でも重要視して良いが軽視されてきた。欧米先進国では土地の用途に合わせた雑草管理マニュアルがあるが日本では自主的な対応に任せられている。日本の数少ない先進例は鉄道会社。線路脇や法面の雑草対策に苦労し、緑地雑草科学研究所に相談して「線路雑草マニュアル」を作成、全国に配布した。

メガソーラーに与える雑草リスクとしては発電量低下による売電収入低下、アレルギー物質の飛散や病害虫の繁殖、景観劣化、管理コストの増大などが挙げられる。売電収入はもちろん、周辺住民からクレームが入れば想定外の費用が発生するためリスク評価の上雑草対策を講じていく。詳しくは10の雑草リスクに備えよ(第1回)参照。

芝生の雑草:スギナ

芝生の雑草(種類と写真、対策)

2017/10/18

雑草対策の代表的な手法5つ

雑草対策の代表的な手法は1.草刈機による除草、2.除草剤の散布、3.防草シートの敷設、4.シバ、クローバーなどの被覆植物の植栽、5.チップなど植物性資材の敷設ということで芝草などのカバープランツが登場する。大きくは雑草が生えてきた後どうするかの対策とそもそも生えないようにする対策の2つ。

メガソーラーの場合パネルを覆う背が高い雑草を抑制するのが第一ですから草丈が低いカバープランツで覆う手法も好まれること、全面を防草シートで覆うのはコスト面で難しいことから複数の対策を組み合わせる。

対策によってはデメリットも。羊・ヤギによる除草は一見エコだが雑草全てを食べてくれる訳ではなく繁殖力の強い問題雑草を好まない傾向がある。

ケンタッキーブルーグラス

おたる水族館羊2頭を契約社員に。労働条件は“芝刈り”

2018/1/16

また周辺に配慮して除草剤を使いたくない事業者もいるが特に新設のメガソーラーでは設計段階で雑草対策を組み込み適切な薬剤使用により雑草発生を5年程度かなり抑えられる。

日本では除草剤を生えてきた雑草を枯らすために使う例が多いがその場で枯らしても再生したりランニングコストがかかる。適切な除草剤を適切なタイミングで使うのが大事と説いていてこれは土壌処理剤を想定している。

除草剤には既に生長した雑草を枯らす「茎葉処理剤」と生える前の時期にまいて生長を阻害する「土壌処理剤」の2種類に分けられる

コンクリート化すれば雑草を完全に抑えられるが気温の上昇、周辺への流水流出による近隣住民からのクレーム原因になる。保水力を維持した雑草対策として芝やクローバーによる緑化が有効。詳しくは5つの雑草対策を組みわせる(第2回)参照。

芝生の雑草:クローバー

芝生の除草剤まとめ

2017/11/13

メガソーラーの雑草管理プラン

メガソーラーの雑草管理プランが確立できた場合次の除草頻度が目標。
・土壌の前処理を行った場合:年に1~2回
・土壌の前処理を行わなかった場合:年に3〜5回、理想的には初年度に3回、次年度に2回、3年度目に1回が目標

コストは手法次第だが1平米10〜50円、高くて1回100円〜というイメージでメガソーラー事業の雑草防除体系が確立される中で相場が決まっていくだろう。

雑草の防除体系が確立されている既存分野では1平米当たり水稲1回3円、ゴルフ場10円、鉄道敷30円程度が相場と既存施設の管理コストが載っている。

実際の雑草管理プランは現地状況次第だが
(1)雑草を発生させない。
(2)雑草を低草高に維持する。または、低い背だけの雑草植生にする。
(3)雑草量を削減して、管理作業を軽減する。
(4)芝生など被覆植物で維持管理する。
の4つのタイプに分けられる。短期的にはソーラーパネルに雑草がかからなければ良い、となりそうだが流水や熱汚染など周辺環境へのリスクも考慮が必要。

機械除草、化学薬剤、防草シート、被覆植物、植物性資材それぞれの特性

4つの手法を組み合わせて雑草管理のプランを立てる。
・草刈り機による機械除草は除草管理技術の中で1番コストが高い。
・防草シートの敷設は最も長く雑草を抑制できる(1回5〜10年)。景観は劣化する。
・被覆植物(グランドカバープランツ)の植栽は最も安価。
・化学薬剤()の散布は最も計画的に雑草を除去できる。30日〜120日など狙った期間雑草発生を抑制できる。また有用植物を残し雑草のみ除去できる。

芝生による防草効果はとくにかく低コストで長期間防草できるという評価。対してクローバーは各地で使用されている割には防草効果がない。夏の高温時に衰退するので通年のグラウンドカバーには向いていないという評価。詳しくは間違った雑草対策でメガソーラーが悪者に(第3回)

除草剤による雑草対策の詳細

メガソーラー事業では地域社会に配慮してできるだけ除草剤は使いたくない、という声が多い。この背景には除草剤への偏見がある。農業人口が減っているのに収量を確保できているのは除草剤によって農業生産性が向上したから。非農耕地、緑地分野でももっと使って良い。

除草剤を草刈り機・芝刈り機による機械除草の代わりにする使い方が多いが土壌処理剤で前処理すれば雑草の発芽を抑制できるメリット。年1回、雑草の発生前から発生初期に除草剤を使用すれば雑草の発生自体を抑えられる。また除草剤は多年草の地下部分も枯らすことでしつこい雑草の再生も抑制できる。また芝生がある場合に芝以外を枯らす選択的な除草が可能。

▼100坪からはエンジン芝刈り機、また背が高い草を含む場合はロータリー式が適している

グリーンマスター

100坪以上の芝生にはエンジン芝刈り機

2017/12/6

▼芝生向けの除草剤も例えば「」シリーズでは土壌処理剤で雑草の発生を抑制し、それでも生えてきてしまった雑草には茎葉処理剤を使用する構成になっている。

芝生の雑草:オヒシバの穂

芝生の除草剤「シバニードアップ」シリーズの特徴と使い方

2017/11/14

もっとも経済的!芝生などカバープランツによる雑草対策の詳細

施設内の雑草管理に被覆植物=カバープランツを使う工法には「芝生化工法」「ササ類緑化方法」比較的新しい「植栽シートによるカバープランツ植栽工法」がある。

日本では古くから芝・笹が使われてきて1500年の歴史がある。芝は江戸時代に盛んに植えられた。笹は熱帯系の植物だが今では日本全国で見られるのは人が植えてきたから。笹は葉で地面を覆うことで他の植物の生長を抑制、落ち葉にもその効果がある。笹はポット苗で流通し芝と比べ管理が用意で刈り込みは年一回で良い。

植栽シートによるカバープランツの植栽工法は透水性の高いシートに穴を開けてカバープランツを植え付ける。シート自体にもある程度防草効果があるがシートを併用することで少ない苗で安定的に地表を覆えるのがメリット。

カバープランツが1番雑草管理の経済性が良いという評価は一旦安定すれば防草効果が永続する点。雑多な雑草が生える環境より生える種類の予測も可能で管理が楽。

初期費用はかかるがランニングコストを考えれば10年で機械除草より低コストになる。土壌保全や流水対策にもなる。

クローバーが防草対策に向かないのは通年性。夏に衰退し雑草と置き換わる、窒素固定で雑草が増える原因になる。

メガソーラーの場合芝草の種類も大事。コウライシバ、西洋芝は防草効果が低く、適応できる環境幅が狭い。

芝生

芝生の種類と特徴

2017/10/16
カバープランツは除草対策で最も経済的(第5回・前半)

メガソーラーに向く芝草は雑草抑制効果が高い「センチピードグラス」「セントオーガスチングラス」

メガソーラーに向いた芝草は何か。求められる特性は(1)背丈が低い、(2)雑草が入りにくい、(3)肥料の要求度が低い、(4)病害虫防除の作業負担が小さい、(5)乾燥や高温、積雪などの気象条件に強い、(6)日陰でも育ち、放置型の管理も可能。

芝草には寒地型芝草()と暖地型芝草(ノシバやコウライシバ、)がある。雑草が増える夏を考えれば暖地型芝草を選ぶ。暖地型でも手がかかり防草抑制効果が低いコウライシバ、バミューダグラスは向いていない。

メガソーラーの芝生として向いている芝草は化学物質の働きで雑草を抑制する「アレロパシー」効果が高い「センチピードグラス」「セントオーガスチングラス」。大規模な例としては中部国際空港がセンチピードグラスで雑草抑制に成功している。草丈は15〜20cmとソーラーパネルを覆う可能性も低い。

センチピードグラスより日陰に強いのが「セントオーガスチングラス」。ソーラーパネルの日陰でも根付く可能性がある。草丈は25cm程度になる。

▼福岡銀行本店の芝生広場で使われているセントオーガスチン
イヌシバ(セントオーガスチン)

芝生の初期造成コストは2000〜3000円/平米

内訳は芝草が1000円/平米、施工が1000〜2000円/平米としていてこれはコウライシバなら400〜500円/平米、センチピードは600〜800円/平米、セントオーガスチングラスで800〜1000円/平米と品種による単価の違いが影響。

▼以前の調査で切り芝が500〜1000円/平米と調査したものと合致。

混合西洋芝の種まき

西洋芝など芝生の種まき 時期と方法

2017/11/8

シートを併用するカバープランツ植栽工法

この手法ではシバザクラやヒメイワダレソウ、ツル植物、ヘデラなどが使われる。シートを使わない場合、苗を4-5倍に増やして植える間隔を狭めないと被覆前に雑草に負けてしまったりする。シートを併用する場合シバザクラとヘデラは1平米当たり4~6ポット、ヒメイワダレソウは1平米当たり1~2ポット植え付ける。

植栽シート工法はシート施工+苗なので初期コストは2000円/平米で芝と同じくらい。シバザクラなど芝や笹よりきれいな花を咲かせるので景観重視するメガソーラー向き。詳しくはメガソーラーに向いたシバとカバープランツ(第5回・後半)

防草シートによる雑草対策の詳細

防草だけじゃもったいない!マルチで環境改善を(第6回・前半) は芝と関係がないので飛ばす。マルチ=複数の手法ではなくMulch=土壌被覆資材の話)

防草シートの種類と特徴

除草シートの素材は4種類。加工性の良いポリエチレン(PE)、軽量で強度があるポリプロピレン(PP)がよく使われる。耐候性に優れたポリエステル(PET)、生分解性があるポリ乳酸(PLA)も。

シートの構造にも違い。織布と不織布、さらに織布の繊維密度が高いタイプと低いタイプがある。ホームセンターでは安価な織布が多い。一般論としては織布の方が隙間から草が貫通しやすい。織布には透水性や通気性があり地面に馴染みやすい長所があり施工しやすい。

高密度の不織布は草の突き抜けには強いが透水性や通気性が低く、厚く地面との密着性が低い。低密度の不織布はその中間。

枯れた芝生

芝生を剥がしたい、枯らしたい場合(除草剤・防草シート)

2017/12/30

防草シートの使い分け

道路や河川、法面など非農耕地では集めでめくれにくく効果が長く続く防草シートが使われる。景観上緑や茶色が好まれる。農地や人が立ち入る場所では扱いやすく上を歩きやすい織布タイプが用いられる。色は黒が好まれる。緑化の植栽シートとして使われる場合透水性があり柔らかい防草シートが使われる。

雑草が出にくい施工方法

雑草抑制には防草シートの施工も大事。防草シートはピン止めするが穴から雑草が出てきてしまう。ピン穴にワッシャーをかぶせたりピンの上からテープを張ったりする。

施工前の地表処理も効果の持続に影響。石はシート破れの原因、既存雑草は除草剤で土壌処理する。防草シートの下は高温多湿で生育環境が良い。日光さえあれば雑草が急激に成長し競合もないので巨大化しがち。

防草シートの管理

防草シートは10年程度の耐久性だが年2回程度の見回りを推奨。雪解けや台風による「めくれ」に注意。ピン穴の雑草も抜いてシールで塞いだりする。詳しくは防草シートは、施工前と後が重要(第6回・後半) 参照。

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