富士化学など芝生の品種改良事例 エルトロ、ビルトール、TM9

化学工業日報によるとケイ酸ソーダ国内大手の富士化学が新規事業として育成中の植栽事業で改良型高麗芝を開発、矮性チガヤは量産体制に入り早期の商業販売を目指す、としています。富士化学の改良型高麗芝「新芝草 わかば」は秋冬期も緑を保つ特徴を持ちます。改良ノシバのエルトロ、改良高麗芝のビルトール、TM9の特徴。

富士化学の改良型高麗芝「新芝草 わかば」の特徴

国際 フラワー&プランツ EXPOに出展していた「新芝草 わかば」が改良型高麗芝、「わい性チガヤ はじめ」が矮性チガヤと思われます。改良型高麗芝の特徴は緑度を長く保ち踏圧に強い高麗芝、矮性チガヤはその名の通り大きくならず管理の省力化が期待できます。

富士化学 植栽事業を本格化 – 化学工業日報 12/25

踏圧や擦り切れに強く、鮮やかなみどりを長く保つ
わかばは宮崎県で採取された高麗芝の新品種で、匍匐茎密度が高く、緻密できめ細やかな芝です。踏圧耐性に優れ、冬期の緑度維持期間が長いことが特徴です。競技場やゴルフ場、校庭、公園などへの利用にお勧めです。

WEB上では情報が少ないのですが東京都農林総合研究センターの「校庭の芝生化に向く芝草新品種の特性調査」によると踏圧に強い品種エルトロ、ビクトールと比べ「わかば」は踏圧後の生育が旺盛で校庭芝生化に有望との結論を出しています。
校庭の芝生化に向く芝草新品種の特性調査

様々な芝生の品種改良事例

エルトロ、ビクトールの名前も出たので品種改良された新しい芝草について幾つか見ていきます。芝生の種類と特徴で触れたように芝生は品種ごとに耐寒性、耐暑性、耐陰性、耐旱性、耐湿性、スポーツ競技場や校庭緑化では耐踏圧性、すり切れ抵抗性、病害虫に強いなどの特徴を持ちます。緑化目的では草丈が低い矮性が管理の省力化に好まれます。

耐寒性:気温の低さに対する強さ
耐暑性:気温の高さに対する強さ
耐陰性:日陰に対する強さ
耐旱性:乾燥に対する強さ
耐湿性:湿度の高さへの強さ

芝草の特性は「ある/ない」の2択ではなく「最適または最強」「適または強」「やや適またはやや弱」「不適または弱」のように強弱があります。またノシバ/高麗芝/バミューダグラス/ベントグラス/フェスク/ライグラスの芝草ごとに大雑把な強い弱いあるもののその中で寒地型芝草だがより暑さに強いなどの品種改良が行われています。

一般家庭や校庭など身近に見られる例としては繁殖力旺盛なティフトン、改良高麗芝、改良ノシバなどがあります。

改良ノシバ「エルトロ」

エルトロはカルフォルニア大学リバーサイド校で生まれたノシバの新品種。ノシバの2倍近くランナーの広がりが早く芝生の形成が早い、地下匍匐茎の層が厚くダメージからの回復に優れ、低刈りに耐え、乾燥に強い特質を持ちます。横方向の生長が早く垂直方向には伸びにくいため結果として芝刈りの手間を減らせます。

改良高麗芝「ビクトール」

ビクトールはエルトロと同じくカルフォルニア大学リバーサイド校で生まれたハイブリッド高麗芝です。赤紫色の元となるアントシアン色素を持たないため出穂期、秋期に暗赤紫色にならず見栄えが良くなります。また高麗芝などの夏芝は秋冬に地上部が枯れますがビクトールは緑色の保持期間が長い特徴を持ちます。普通の高麗芝は12月には枯れていますがビクトールは12月上旬まで緑色を保つようです。ビクトールは路面電車の軌道を芝生で緑化でも使われています。

トヨタが開発!改良高麗芝「TM9」

トヨタが開発したTM9(ティー エム ナイン)は少管理型高麗芝。高麗芝は夏週1の芝刈りが必要ですがTM9は年1〜2回の芝刈りで緑が美しい緻密なターフを形成します。草丈が従来品種の半分以下で年に一度2cm程度に芝刈りすれば最大6cmくらいに留まります。普通の高麗芝は放置すれば10cm以上になりますので相当省力化できそうです。

芝生の種まき 時期と方法で調べた時は切り芝1束500〜1000円でしたがTM9は1平米1200円くらいと値段も普通です。