2018年1月末、関東では久しぶりの大雪に見舞われました。北海道や東北など積雪が当たり前の寒冷地・冷涼地でも、公園や競技場に芝生が使われています。雪が積もった芝生には、どのような手入れが必要なのでしょうか。
結論から言うと、コウライシバやノシバは冬になると地上部が枯れているため積雪の影響を受けません。一方、常緑の西洋芝を数ヶ月にわたって雪の下に置く地域では、雪解け後の「雪腐病」に注意が必要です。この記事では、積雪地域における芝生管理の実例と、雪腐病の予防策をまとめます。
雪が積もった芝生は、雪をかいたり融雪剤をまいたりした方がいいのでしょうか。




数日程度の積雪であれば、日本芝・西洋芝ともに特別な処置は不要です。問題になるのは積雪期間が長い地域だけなので、まずは自分の地域がどちらに当たるか確認しましょう。
数日の積雪なら芝生の対処は不要
日本芝も西洋芝も、数日程度の積雪であれば問題は起こりません。ただし積雪期間が数ヶ月に及ぶ地域では、西洋芝に病気が発生する可能性があるため、地域の気候と芝の種類に応じた見極めが欠かせません。
日本芝と西洋芝で状況が異なる理由
冬季に地上部が枯れるノシバ・コウライシバなどの日本芝と、常緑の西洋芝とでは冬の状態がまったく違います。コウライシバとノシバを比べると、寒さに強いのはノシバで、東北など冷涼地でも採用されています。夏芝は寒くなると地上部が枯れて地下部分が休眠するため、雪に覆われても影響を受けません。
厳冬期の西洋芝管理のポイント
北海道では冬芝で常緑のケンタッキーブルーグラスが使われ、東北や高地の冷涼地でも冬芝の西洋芝が定番です。雪が降るような1〜2月は、寒さに強い西洋芝も生長が止まっているため、基本的に手を加える必要はありません。ただし霜柱によって芝が持ち上げられ、根が弱ったり葉色が落ちたりすることがあるため、霜よけとして不織布をかけて保護するケースもあります。
霜柱で土が持ち上がると、芝の根が土から離れて乾燥しやすくなります。踏圧をかけて土を押し戻すか、不織布で表土の凍結自体を抑える対処が有効です。
積雪期間が長い地域では雪腐病のリスクがある
積雪期間が数ヶ月以上続く地域では、雪の下で「雪腐病」の原因菌が広がり、雪解けとともに症状が現れることがあります。雪の下は一定の温度と湿度が保たれるため、病原菌にとってはむしろ増殖しやすい環境になる点に注意が必要です。雪腐病の詳しい特徴と対策は後の章で解説します。






札幌ドームに見る積雪地域の芝生管理






積雪期間が長い地域では、冬の天然芝をどう管理しているのでしょうか。参考になるのが札幌ドームの事例です。
札幌ドームは天然芝のグラウンド「ホヴァリングサッカーステージ」を持ち、空気圧で芝生ごと浮かせてドームの外へ出し入れするという珍しい運用で知られています。東京ドームをはじめとするドーム球場は日照量が足りず人工芝の採用が多いなか、札幌ドームの裏側|札幌ドームという方式によって、屋外で日光を当てながら天然芝を育てているわけです。
では、冬の間この天然芝はどのように過ごしているのでしょうか。実は、積雪した状態のままドームの外で冬を越します。吹きさらしの状態よりも、雪に覆われているほうが温度や湿度が安定するためです。
雪は断熱材の役割を果たします。積雪下の土壌は外気温より安定しやすく、根や地下茎を凍結から守る効果があります。札幌ドームの運用は、この特性を逆手に取った管理方法といえます。
雪解け後に発覚する芝生の病気「雪腐病」とは
2〜3ヶ月にわたって雪が積もる地域では、雪解け直後に芝が不定形の円状に枯れたパッチが広がる病気が発生します。これが「雪腐病」です。雪が積もっている間に病原菌が静かに増殖するため、雪解け後に殺菌剤を使っても効果がほとんどないのが厄介な点です。原因菌は複数種類ありますが、まとめて「雪腐病」と呼ばれています。
雪腐病は雪解け後の対処では手遅れです。防除は根雪になる前、秋のうちに済ませておく必要があります。



雪腐病の症状や進行の様子は、雪腐病類(農作物病害虫データベース) | 長野県農業関係試験場でも確認できます。
雪腐病を予防する殺菌剤「ヘリテージ」
雪腐病の対策は、根雪になる前の11〜12月に殺菌剤をまいておくことが基本です。雪腐病は原因菌が一種類ではないため、複数の病気に対応できる薬剤を軸に組み立てる必要があります。この点で候補になるのが「ヘリテージ」です。葉腐病(ラージパッチ)、ピシウム病、春はげ病、フェアリーリング病、雪腐病まで、幅広いスペクトラム(適用対象)を持っています。
| 対象病害 | 発生しやすい時期 |
|---|---|
| 雪腐病 | 積雪期〜雪解け後 |
| 葉腐病(ラージパッチ) | 梅雨から初秋 |
| ピシウム病 | 高温多湿の時期 |
| 春はげ病 | 春先の生育開始期 |
| フェアリーリング病 | 梅雨から秋 |
殺菌剤は


殺菌剤は使用時期を逃すと効果が大きく下がります。根雪になってからでは薬剤が芝の内部まで行き渡らないため、必ず根雪前の防除を心がけてください。
それでも雪を溶かしたい場合、芝生に融雪剤はNG?
芝生は草が生えているとはいっても地面は土なので、道路と比べて雪が溶けにくいものです。気になるからといって融雪剤を使ってよいのでしょうか。
栃木県でも1月末の大雪の影響が報道されており、残る大雪、影響続く 冷え込みで除雪進まず 栃木県内スポーツ施設|下野新聞「SOON」によると、ゴルフ場では「重機で除雪を急ぐが、狭いカート道は人の手が頼り。フェアウエーは芝を痛めてしまうため重機が入れず、雪解けを待つしかない」、運動競技場では「天然芝のため融雪剤を使った除雪作業が進められず、散水と気温の上昇による雪解けを期待するしかない」とされています。
凍結防止剤や融雪剤と呼び方はさまざまですが、多くは白い顆粒で、塩化カルシウム(塩カル)あるいは塩化ナトリウムを主成分とします。水に溶けると氷が溶ける温度が下がる仕組みで、事前にまけば凍結防止、凍結後にまけば融雪剤として使われます。一方で塩化ナトリウムは塩そのものなので、鉄骨をさびさせたり植物に塩害を及ぼしたりするという報告があります。運動競技場が芝生への使用を避けているのは、この塩害を避ける狙いがあると考えられます。
- 散水や気温上昇による自然な雪解けを待つ
- カート道など芝がない部分は重機や人の手で除雪する
- 塩化ナトリウム系の融雪剤を芝生に直接まく
- フェアウエーなど芝生の上に重機を入れて除雪する
市販の融雪剤には、


また、


現地で撮影した写真









まとめ
コウライシバ・ノシバは冬に地上部が枯れているため、数日から数ヶ月の積雪でも問題は起こりません。西洋芝は常緑のまま冬を迎えるため、積雪期間が長い地域では雪解け後の雪腐病に注意が必要です。防除の要点は、根雪になる前の秋にヘリテージなどの殺菌剤をまいておくことです。雪解け後の処置では効果が出ないため、時期を逃さないようにしましょう。融雪剤は塩害のリスクがあるため、芝生への直接使用は避け、自然な雪解けを待つのが基本です。
よくある質問
- 数日程度の積雪でも芝生に雪かきは必要ですか。
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数日程度の積雪であれば、日本芝・西洋芝ともに雪かきなどの処置は不要です。自然な雪解けを待って問題ありません。積雪が数ヶ月以上続く地域でのみ、雪解け後の病気対策を検討してください。
- 雪腐病はどのタイミングで対策すればよいですか。
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雪腐病の病原菌は積雪中に増殖するため、雪解け後に殺菌剤をまいても効果はほとんど期待できません。根雪になる前の11〜12月に殺菌剤を施用しておくことが対策の基本です。
- 芝生に融雪剤を使ってもよいですか。
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融雪剤の主成分である塩化ナトリウムは植物に塩害を及ぼすおそれがあるため、芝生への直接使用は避けたほうが安全です。運動競技場やゴルフ場でも、散水や気温上昇による自然な雪解けを待つ運用が一般的です。
- コウライシバとノシバはどちらが寒さに強いですか。
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ノシバのほうが寒さに強く、東北など冷涼地でも使われています。両者とも冬は地上部が枯れて休眠するため、積雪そのものによる被害は基本的に起こりません。








