関東では1月末に久しぶりの大雪が降りました。北海道〜東北など寒冷地、冷涼地では積雪がありますが芝生が使われています。積雪する地域での芝生の管理で気をつけることはあるでしょうか?結論としてはコウライシバ・ノシバでは地上部が枯れているので問題なし、西洋芝で積雪期間が数ヶ月以上ある場所では雪解け後の雪腐病に注意します。
数日の積雪なら芝生の対処は不要
日本芝、西洋芝共に数日の積雪は全く問題がありませんが数ヶ月積雪する地域では西洋芝に病気が出る可能性があります。
まず冬季に地上部が枯れるノシバ・コウライシバなど日本芝と常緑の西洋芝とで状況が異なります。コウライシバとノシバではノシバの方が寒さに強く東北など冷涼地でも使われています。夏芝は寒くなると地上部が枯れて地下部分が休眠するので降雪の影響はありません。
厳冬期の西洋芝管理の一般論
北海道では冬芝で常緑のケンターキーブルーグラス、東北や高地の冷涼地でも冬芝の西洋芝が使われています。雪が降るような1〜2月は寒さに強い西洋芝も生長が停止していて特にやることはありません。霜柱で持ち上げらて弱ったり色が落ちるので霜よけのため不織布をかけて保護する場合があります。
▼霜柱で持ち上げられた表土
積雪期間が長い地方での芝生には雪腐病のリスク
積雪期間が数ヶ月以上続くエリアでは雪の下で「雪腐病」原因菌が広がり雪解けとともに発症することがあります。雪腐病については後述します。
▼残雪が残る南池袋公園の芝生。冬芝でオーバーシーディングしている。
札幌ドームに見る芝生管理
積雪期間が長い地方で冬の天然芝管理を見てみましょう。
札幌ドームは天然芝のグラウンド「ホヴァリングサッカーステージ」を持ち空気圧で浮かせてドームと外とを出し入れする珍しい運用で有名です。東京ドームを始めドーム球場は日照量が足りないので人工芝の採用が多い中、札幌ドームでは外に出すことで天然芝を育てています。
札幌ドームの裏側|札幌ドーム
▼芝がない札幌ドーム(1月撮影)
冬の間札幌ドームの天然芝はどうしているか。実は積雪した状態のまま冬越しします。吹きさらしよりも積雪状態の方が温度や湿度が安定するそうです。
▼屋外で雪に覆われた札幌ドーム用の天然芝(1月撮影)
雪解け後に発覚!積雪時に広がる芝の病気「雪腐病」
2〜3ヶ月の積雪地帯で雪解け直後に芝が不定形の円状に枯れたパッチが広がる病気が雪腐病。積雪している間に病原菌が増殖するので雪解け後の対策では殺菌剤が効かない点に注意。病原菌は複数あるが総称して「雪腐病」と呼ばれます。
雪腐病類(農作物病害虫データベース) | 長野県農業関係試験場
雪腐病予防の殺菌剤「ヘリテージ」
「雪腐病」の対策としては根雪前、11〜12月に殺菌剤をまきます。雪腐病は可能性のある原因菌が複数あるためスペクトラム(=適用対象)が葉腐病(ラージパッチ)、ピシウム、春はげ病、フェアリーリング病、雪腐病と広い「ヘリテージ」を軸に組み立てると良いでしょう。
それでも雪を溶かしたい場合…芝生に融雪剤はNG?!
芝生は草が生えていると言っても土の上で道路と比べてなかなか雪が溶けませんよね。気になる場合融雪剤を使って溶かしてよいものでしょうか?
栃木県でも1末の大雪の影響が報道されていますがゴルフ場の場合「重機で除雪を急ぐが、狭いカート道は人の手が頼り。フェアウエーは芝を痛めてしまうため重機が入れず、雪解けを待つしかない」、運動競技場の場合「天然芝のため融雪剤を使った除雪作業が進められず、散水と気温の上昇による雪解けを期待するしかない」としています。
残る大雪、影響続く 冷え込みで除雪進まず 栃木県内スポーツ施設|下野新聞「SOON」
凍結防止剤、融雪剤、呼び方は様々ですが白い顆粒で塩カル=塩化カルシウムあるいは塩化ナトリウムを主成分とします。水に溶けると氷が溶ける温度が下がります。事前にまけば凍結防止、凍結後にまけば融雪剤です。一方塩化ナトリウムは塩なので鉄骨が錆びたり、植物に塩害があるという報告があります。運動競技場の芝生への使用を避けるのは塩害を避けるためと考えられます。