芝生には一年を通じて様々な病気が発生します。芝生の見栄えや生長に関わる病気もあり早急な対処で被害が抑えられます。ラージパッチ、ダラースポット、さび病、雪腐病、ピシウム菌、うどんこ病、いもち病、フェアリーリングなどの症状と対策。菌類の対策には殺菌剤などの薬剤を散布します。
芝生の病気「ラージパッチ」の症状と対策
「ラージパッチ」の症状
ラージパッチは葉腐病とも呼ばれ日本芝・西洋芝ともに暖地型芝生に発生します。数cm〜10mと様々なサイズのものがありパッチ(継当て)状に芝が枯れます。ラージパッチの縁が写真のようにオレンジ色になるのが特徴。病原菌はリゾクトニア菌の仲間Rhizoctonia solani AG2-2 LPで夜間の10〜15度と降雨が続くなど湿度が高い状況を好み春と秋が発生時期。
リゾクトニア菌は地際に感染し夏になると再生したように見える日本芝も感染したままで秋に再発します。また秋は芝生が再生しないので翌春の萌芽が悪くなる影響があります。また農作業器具や芝刈りを通じて病原菌が飛び地で感染することがあります。
▼ラージパッチには色々なサイズがある
▼ラージパッチの縁はオレンジ色、内側は枯れている
「ラージパッチ」の対策と予防
ラージパッチが発症したら殺菌剤を散布する必要があります。ラージパッチ対策として有効な殺菌剤は「ベンレート水和剤」「グランサー水和剤」「キャプレート水和剤」です。薬剤の使用方法は希釈して均一にまきます。
芝生の病気「ダラースポット」の症状と対策
「ダラースポット」の症状
「ダラースポット」は日本芝にも西洋芝にも出ます。窪んだ円形状のパッチができ初期の病斑の縁は赤茶、進行すると地下部まで侵され裸地化します。
スポット状の症状を示す病気は幾つかあるため初期の正確な判定が大事です。早朝に雲状の菌糸が観察できることで区別できます。日中の寒暖差が激しく朝露が付くような状態を好みます。低窒素で乾燥した場所、例えばグリーンなどで被害が深刻化します。病原菌は複数あるとされ特定されていません。
「ダラースポット病」の対策と予防
朝露を避けるため夜散水は避け朝散水にします。早春から晩秋まで発生期間が長く発生頻度も多いため薬剤ローテーションして耐性を避けます。
芝生の病気「さび病」の症状と対策
「さび病」の症状
「さび病」は農作物を含む様々な植物に病害を及ぼします。写真はにんにくの事例。日本芝西洋芝ともに発生するが高麗芝で初夏や秋の発生が多い。湿度が高く日陰の環境を好みます。冠さび、葉さび、黄さび、黒さび病など色々あるが葉に鉄さびのような病斑が現れ最終的に褐色〜鉄さび色の胞子を放出します。
「さび病」の対策と予防
感染だけでは枯れませんが放置しているといずれ枯死するため発生初期にトリホリン乳剤などを希釈散布します。
▼商品名は「サプロール乳剤」ですが有効成分はトリホリンです。
芝生の病気「ピシウム病」の症状と対策
「ピシウム病」の症状
芝生の葉に蜘蛛の巣のような白いもやもやした糸が張っている場合蜘蛛ではなくピシウム菌の菌糸です!日本芝・西洋芝ともに発生し芝生に不定形のの退色部が現れ、枯死して褐色になってしまいます。病原菌自体はあちこちに常在し、特に夜間湿度が高い日の翌朝突然発症します。ピシウム菌は150種類程度ありその中の30−40種類が病原性を持っています。赤焼病、雪腐病とその他を総称したピシウム病に分けられます。
「赤焼病」
25度以上の熱帯夜が続いた後の降雨など高温多湿状況が揃った時のみ発生し西洋芝のベントグラス=ゴルフ場のグリーンに大きな被害を及ぼします。
「雪腐病」
北海道〜日本海側で融雪直後にパッチとして現れる病気の総称で複数の病原菌があるが「褐色雪腐病」はピシウム菌の仲間が原因です。
【石神の丘の5月】
芝生の上のキラキラ。蜘蛛の巣なのかな、と思っていましたが、どうやらピシウム菌という菌類らしいです。 pic.twitter.com/OKjCK21aLn— 岩手町立石神の丘美術館 (@ishigami_muse) 2016年5月22日
「ピシウム病」の対策と予防
水分が多いと繁殖が広がるので排水に努めます。加湿を避けるためゴルフ場では大型の送風機を使ったりします。殺菌剤の「ランマンPフロアブル」「クロステクト水和剤」「ターフシャワー」などが赤焼病、ピシウム病に効く薬剤です。耐性が付くのを避けるため複数の薬剤に切り替えていきます。