水族館の受付前で草を食べる羊。その脇に掲げられた一枚の紙に、思わず笑ってしまった人は多いはずです。おたる水族館が羊2頭を”契約社員”として採用し、業務内容を芝刈りとするユーモラスな労働条件通知書を掲示したところ、訪問客のツイートが4.8万リツイートを超える話題となりました。
水族館に羊がいるって、そもそもどういう経緯なんでしょうか。




実は除草を目的とした導入なんです。牧草を食べる家畜と芝生の関係を知ると、話題になった理由がよくわかりますよ。
この記事では、話題になった労働条件通知書の内容と、その裏側にある除草方法の工夫、そして牧草由来の芝草の正体までを整理しました。芝生と牧草の意外なつながりも見えてきます。
芝刈り担当は羊の”契約社員”、おたる水族館の通知書が話題に
おたる水族館の羊が注目を集めたのは2016年5月のことです。水族館は2015年から敷地内の草刈りに羊を利用しており、二酸化炭素を出す芝刈り機を使わずに済むエコな除草方法として導入されたものでした。
「なぜ水族館に羊がいるのか」という訪問客からの質問が相次いだため、説明用に掲示された一枚の紙。そこには羊を契約社員に見立てた労働条件が、丁寧な事務文書の体裁で書かれていました。この発想の面白さがネットで拡散する決め手になったようです。
家族サービスで小樽水族館に行ったら羊が草食っててさ。見たら労働条件が掲載されててコーヒー噴いたpic.twitter.com/GymKnYTGYu
買収 a.k.a ぱらきん(@baisyuu03)さんの投稿2016年5月5日
羊が出迎える水族館という珍しさ自体も、話題になった要因の一つといえます。
こちらは、全国でも珍しい、羊が出迎えてくれる水族館です。#おたる水族館 pic.twitter.com/PkwgGkPHxw
ひまわり(@himachan910)さんの投稿2017年10月10日
労働条件通知書というビジネス文書の形式に、動物の生態をそのまま当てはめたギャップが、SNSでの拡散を後押ししました。
羊の勤務期間と休憩ルールを詳しく見る
話題になった通知書には、勤務期間や休憩の取り方まで具体的に記されていました。羊たちは4月末から、多分10月半ばまでという幅を持たせた表現で、水族館の草地全般の草刈り業務に従事するとされています。ゴールデンウィークとお盆には早出・延長作業があると明記されているのも、実際の労働条件書式をなぞったユーモアです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勤務期間 | 4月末頃から10月半ば頃まで |
| 業務内容 | 水族館敷地内の草地の草刈り全般 |
| 繁忙期対応 | ゴールデンウィーク・お盆に早出・延長作業 |
| 休憩時間 | 好きな時に好きなだけ |
休憩時間は「好きな時に好きなだけ」。羊がのんびり草を食べたり休んだりする自然な行動を、そのまま労働条件として文章化した点に、担当者のセンスがうかがえます。
羊の勤務期間が10月半ば頃までとされているのは、小樽の気温が下がり草の生長が鈍る時期に合わせたものと考えられます。動物任せの除草は、草が旺盛に育つ季節に限られる点も特徴です。
なぜ小樽の気候は羊による除草に向いているのか
羊が長期間にわたって除草業務を担えるのは、小樽の気候条件にも理由があります。おたるの5月の平均気温は10度前後、8月は20度前後で、寒地型芝草の生育適温に当たる時期とちょうど重なっています。気温が上がりすぎない土地だからこそ、草が途切れなく生えて羊の食料にもなり続けるわけです。
寒地型の芝草は夏の高温に弱く、真夏に生育が落ち込む地域も少なくありません。北海道のように涼しい気候であれば、初夏から初秋にかけて生長が続きやすく、羊にとっても安定した食料源になります。
東京でも進む動物除草、ヤギ活用の広がり
動物による除草は北海道だけの取り組みではありません。東京では多摩センターの斜面除草にヤギが活躍し、町田でもURがヤギ除草の実験をおこなっています。UR都市機構|UR都市機構について|社会・環境活動:環境配慮技術の紹介こうした事例は、都市部でも動物除草への関心が広がっていることを示しています。
多摩センターの除草ヤギ(8/25) pic.twitter.com/XjAH5sTBWA
lonely goat(@lonelygoat1)さんの投稿2016年8月26日
ヤギは人の手による草刈りが難しい急傾斜地でも作業できるうえ、道端で足を止める人が増えることで、ご近所同士の会話が生まれるといった副次的な効果も報告されています。
- 芝刈り機の燃料や電力を使わず、二酸化炭素の排出を抑えられる
- 急傾斜地や機械が入りにくい場所でも作業できる
- 動物を見に人が集まり、地域の会話や交流のきっかけになる
一方で、動物任せの除草には限界もあります。冬季や気温が低い時期は稼働できず、雑草の種類によっては食べ残しが出ることもあります。導入する側は、機械除草と組み合わせながら運用しているケースが多いようです。
低い草丈でも生き続ける草が”芝生”、牧草由来の芝草を知る
羊が食べる草というと、芝生とは別物のように感じるかもしれません。しかし牧草地で牛が食べることによって低い草丈が保たれるのも、芝生の一形態にほかなりません。芝生の用途と利用シーンにあるように、牧草由来の芝草はいくつも存在します。
生育が旺盛なライグラス類、飼料生産に使われるオーチャードグラス、通称カモガヤ、トールフェスク、そしてケンタッキーブルーグラスなどが代表例です。これらに共通するのは、生長点が低く、上部を食べられても生長を続けられるという性質です。この特性こそが、芝生に向く草かどうかを分ける決め手になります。
| 芝草の種類 | 特徴 |
|---|---|
| ライグラス類 | 生育が旺盛で発芽が早い |
| オーチャードグラス(カモガヤ) | 飼料生産に広く使われる |
| トールフェスク | 耐暑性・耐乾性に優れる |
| ケンタッキーブルーグラス | 冷涼な気候を好み、北海道で多く利用される |
これらの草種のうち、冷涼な北海道でもっとも使われているのがケンタッキーブルーグラスです。この気候特性と利用実績を踏まえると、冒頭で紹介したおたる水族館の羊が食べているのも、ケンタッキーブルーグラスの芝生と考えられます。
- 生長点が低く、刈られても再生できる草である
- 踏圧や食害に対する回復力がある
- 気候条件に合わせて生育適温の範囲に収まっている
家庭の庭に羊やヤギを放牧することは現実的ではありません。ただ、動物に食べられても再生する草の性質は、芝刈りの頻度や耐久性を考えるうえでのヒントになります。芝生選びの際は、生長点の位置や再生力にも目を向けると、日々の手入れが少し楽になるはずです。
牧草由来の芝草は、家畜に食べられ続けても生き延びる強さを持っています。この強さは、芝刈り機で頻繁に刈り込む一般家庭の庭にもそのまま活かせる性質です。
まとめ
おたる水族館の羊による除草は、ユーモアだけでなく、二酸化炭素排出を抑えるという実用的な狙いから生まれた取り組みでした。小樽の気候が寒地型芝草の生育適温に当たること、東京でもヤギによる除草が広がっていることを見ると、動物と芝草の関係は各地で少しずつ工夫されていることがわかります。
- 羊による除草はエコな芝刈り方法として2015年から導入された
- 勤務期間は4月末頃から10月半ば頃までで、小樽の気候に合わせている
- 東京でもヤギによる除草が広がり、急傾斜地や地域交流に活用されている
- 牧草由来の芝草には生長点が低く再生力の高い品種が多い
- おたる水族館の羊が食べているのはケンタッキーブルーグラスと考えられる



よくある質問
- おたる水族館はいつから羊による除草を始めたのですか?
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2015年から敷地内の草刈りに羊を導入しています。2016年5月に、羊を契約社員に見立てた労働条件通知書がネットで話題になりました。
- 羊たちの勤務期間はどのくらいですか?
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4月末頃から10月半ば頃までとされています。ゴールデンウィークとお盆には早出・延長作業がおこなわれるとも記されていました。
- 羊が食べている草の種類は何ですか?
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北海道で広く使われている芝草であることから、ケンタッキーブルーグラスと考えられます。冷涼な気候を好む寒地型芝草の一種です。
- 動物による除草にはどんなメリットがありますか?
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芝刈り機の燃料や電力を使わずに済むため二酸化炭素の排出を抑えられます。急傾斜地での作業ができる点や、地域の会話が生まれる点も利点として挙げられます。
- 牧草由来の芝草にはどんな種類がありますか?
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ライグラス類、オーチャードグラス、トールフェスク、ケンタッキーブルーグラスなどが代表的です。いずれも生長点が低く、食べられても再生できる性質を持っています。








