芝生が夜のあいだに食い荒らされていたり、株が部分的に枯れてきたりしたら、害虫の仕業を疑ってよいでしょう。芝生の害虫駆除でよく名前が挙がるのが、オルトラン、スミチオン、フルスイングの3つの殺虫剤です。ただしこの3剤は有効成分も効く害虫の範囲もまったく違います。選び方を間違えると、せっかく薬剤を撒いても駆除できずに終わってしまいます。
うちの芝、コガネムシにやられてるみたいなんです。オルトランを買えば大丈夫でしょうか。




実はオルトランでは、コガネムシの幼虫は駆除できません。害虫の種類ごとに効く薬剤が決まっているので、まず何の被害かを見分けることが大切です。この記事で薬剤ごとの違いを整理していきましょう。
この記事では、オルトラン・スミチオン・フルスイングそれぞれの有効成分と適用害虫、正しい使い方を整理したうえで、粒剤・水和剤・液剤といった剤型の違いも解説します。芝生の被害を見て「どの薬剤を買えばいいのか分からない」という状態から、迷わず選べる状態を目指します。
芝生の三大害虫を見分ける
薬剤を選ぶ前に、まず自分の芝生に発生している害虫を特定しましょう。芝生の被害でとくに多いのが、スジキリヨトウ、シバツトガ、コガネムシ類の3種です。この3種は見た目も被害の出方も異なります。
スジキリヨトウは蛾の幼虫で、日中は土の中に潜み、夜になると出てきて葉や茎を食べます。シバツトガも蛾の一種で、俗に「ツトガ」と呼ばれます。幼虫は芝の葉や砂粒で作った巣(苞)に日中は隠れ、夜間だけ活動する点はスジキリヨトウと似ています。
コガネムシ類はマメコガネやスジコガネなどの仲間で、被害の出方が前の2種とはっきり違います。西洋芝では株が部分的に枯れ、日本芝では面的に生育不良が広がるのが特徴です。幼虫はカブトムシの幼虫を小さくしたような姿で、地中の茎や根を食べて枯れを引き起こします。成虫は照明に寄ってくる習性があります。



- 夜間に葉や茎が食害される、日中は虫が見当たらない→スジキリヨトウかシバツトガの可能性
- 芝生が部分的または面的に枯れ、根元を掘るとイモムシ状の幼虫がいる→コガネムシ類の可能性
- 夜間に照明の周りで甲虫を見かける→コガネムシ成虫が発生している可能性
見分けがついたら、あとは害虫ごとに効く薬剤を選ぶだけです。次項から3つの殺虫剤の特徴を見ていきます。
殺虫剤オルトランの特徴と芝生への使い方
オルトランは住友化学園芸(2025年に社名変更し現・KINCHO園芸)が展開する家庭園芸用殺虫剤シリーズです。有効成分のアセフェートは浸透移行性を持ち、葉や根から吸収されて植物の体内を移動しながら、吸汁性害虫や食害性昆虫を退治します。効果が長く続くのが浸透移行性の利点です。
浸透移行性の殺虫剤は、いったん植物に吸収されると雨で流れにくく、効果が長持ちします。散布回数を減らせる分、コストや手間を抑えやすいのが特徴です。
オルトランの適用作物・適用害虫
オルトランは菊や観葉植物、きゅうりやトマトなど家庭菜園向けにも使われる薬剤ですが、実は製品によって芝生に使えるものとそうでないものがあります。同じ「オルトラン」の名前でも、農薬登録上、芝に使えるのは一部の製品だけという点に注意が必要です。
| 製品名 | 主な有効成分 | 芝への農薬登録 |
|---|---|---|
| GFオルトランC | アセフェート・スミチオン・サプロール配合 | 登録なし |
| GFオルトラン液剤 | アセフェート | 登録なし |
| オルトランDX粒剤 | アセフェート・クロチアニジン | 登録なし |
| 家庭園芸用GFオルトラン水和剤 | アセフェート | 登録あり |
| 家庭園芸用GFオルトラン粒剤 | アセフェート | 登録あり |
芝生に使えるのは「家庭園芸用GFオルトラン水和剤」と「家庭園芸用GFオルトラン粒剤」の2種類です。それぞれスジキリヨトウ、シバツトガ、タマナヤガといった害虫向けに登録されているとの情報がありますが、水和剤にはケラ・シバオサゾウムシ成虫・アカフツヅリガも含まれるとする資料も見られます。この詳細は公式サイトの適用表がPDFで公開されているため、購入前に最新の登録内容を確認しておくと安心です。
オルトランは芝生三大害虫のうち、コガネムシ類幼虫には効きません。コガネムシも駆除したい場合は、後述するスミチオンなど別の薬剤を検討してください。
- スジキリヨトウ、シバツトガ、タマナヤガによく効く
- 浸透移行性で効果が長く続く
- コガネムシ類幼虫には効果がない
- 製品によって芝への農薬登録の有無が異なる
菊や宿根スターチスの適用害虫としてコガネムシ類幼虫が含まれている製品があり、それを見て「オルトランはコガネムシにも効く」と誤解した口コミも見かけます。あくまで芝の農薬登録としてはコガネムシ類幼虫は対象外なので、混同しないよう注意してください。似た名前の「オルチオン乳剤」もオルトランとスミチオンを混同した名称で、芝では農薬登録されていません。
家庭園芸用として広く流通しているのが住友化学園芸 家庭園芸用GFオルトラン粒剤 1.6kgです。パッケージは


「スミフェート」という商品名で、有効成分がオルトランと同じアセフェートのジェネリック農薬が販売されています。レインボー薬品のシバキープシリーズにもラインナップされているとの情報がありますが、芝への農薬登録の詳細は公式サイトの記載だけでは確認できませんでした。購入前に最新の適用情報を確認することをおすすめします。
レインボー薬品からはレインボー薬品 スミフェート粒剤 800gも販売されており、


オルトランの使い方と効果
水和剤と粒剤では準備の手順が異なります。水和剤は水で薄めてから散布し、粒剤はそのまま均一に撒きます。どちらも散布後の散水が効果を左右するポイントです。
水和剤は規定の倍率で水に溶かします。粒剤はそのまま使えるので希釈の手間はありません。
ムラができると効果に差が出るため、なるべく均一に行き渡らせます。土壌が極度に乾燥しているときは効果が落ちるため使用を避けます。
スジキリヨトウ、シバツトガ、タマナヤガの防除では、散布後に1平方メートル当たり0.5〜1.0リットルの散水を行います。粒剤が地中に行き渡り、根からの吸収も進みます。
住友化学園芸 オルトラン水和剤 5g×8は


殺虫剤スミチオンの特徴と芝生への使い方
スミチオンは草花や庭木、野菜、果樹まで広範囲の害虫に使える代表的な園芸用殺虫剤です。有効成分は有機リン・有機硫黄系のMEP(フェニトロチオン)で、住友化学園芸からは「家庭園芸用スミチオン乳剤」の商品名で販売されています。
住友化学園芸の住友化学 殺虫剤 スミチオン乳剤 500mlは


スミチオンの適用作物・適用害虫
スミチオンはオルトランと並ぶ代表的な園芸用殺虫剤で、適用作物・適用害虫のリストは列挙しきれないほど広範囲です。詳細な適用表は家庭園芸用スミチオン乳剤|住友化学園芸で確認できます。
芝生に関しては、コガネムシ類幼虫への使用が明確に案内されている点が最大の特徴です。シバツトガ、スジキリヨトウ、シバオサゾウムシについても登録があるとの情報がありますが、すべての害虫での登録内容は購入前に公式の適用表で確認しておくことをおすすめします。オルトランでは駆除できないコガネムシに対応できる点で、三大害虫の対策を1剤でカバーしやすい薬剤です。
スミチオンの使い方と効果
スミチオン乳剤は水で薄めて散布します。コガネムシ類幼虫を対象にする場合は、散布量を増やし、土壌にしっかり染み込ませることが重要です。
- コガネムシ類幼虫には散布液が土壌中に十分しみ込むよう、ジョロなどで1平方メートル当たり3リットルを目安に散布する
殺虫剤フルスイングの特徴と芝生への使い方
フルスイングはゴルフ場向けにも使われる殺虫剤として知られ、住友化学から販売されています。「ゴルフ場殺虫剤の売上No.1」と紹介される場合もありますが、この表記は時期によって変わる可能性があるため、最新の販売実績は公式サイトで確認するのが確実です。有効成分はクロチアニジンで、甲虫類、鱗翅目、半翅目、直翅目、アザミウマ目など幅広い害虫に殺虫活性を示します。
フルスイングはネオニコチノイド系の農薬です。ネオニコ系農薬はミツバチの大量死との関連が疑われ、EUでは予防的措置として使用が制限されています。一方で、EUのネオニコチノイド剤規制に対する住友化学の見解では、ネオニコチノイド剤がミツバチの大量死・大量失踪の主たる原因ではないという立場が示されており、評価が分かれている点は知っておく必要があります。
フルスイングの使用上の注意には「ミツバチを放飼している地域では使用を避けてください」「マルハナバチに影響を及ぼす恐れがあるので注意してください」との記載があります。近隣で養蜂が行われている場合は、使用前に確認しておくと安心です。
フルスイングの適用作物・適用害虫
フルスイングはコガネムシ類、シバツトガ、スジキリヨトウの芝生三大害虫に効果があるとされています。チビサクラコガネ、ヒラタアオコガネ、セマダラコガネ、ウスチャコガネ、アシナガコガネ、ヒメコガネといった複数のコガネムシ類のほか、シバオサゾウムシへの適用が案内されている資料も見られますが、タマナヤガ幼虫を含む適用範囲の詳細は販売元によって表記が異なるため、購入前に最新の登録内容を確認してください。
コガネムシでは、成虫の発生期・産卵期・幼虫期のいずれの時期に散布しても優れた残効性を発揮するとされています。コガネムシとシバツトガを同時に防除できる点と、残効性の長さが経済的なメリットとして紹介されています。人畜や魚介類への影響が少なく、日本芝・西洋芝ともに薬害の心配が少ないともされていますが、これらの安全性表現も一般的な農薬の傾向であり、使用にあたっては製品ラベルの記載を基準にしてください。
芝生用殺虫剤 フルスウィング 100g ゴルフ場で使用されているフルスイング コガネムシ ヨトウ ゾウムシ駆除は


フルスイングの使い方と効果
フルスイングは希釈してジョウロなどで散布します。とくにコガネムシ類幼虫への効果を実感したという口コミが多く、散布後数日で幼虫の死骸を確認できるケースもあるようです。値段はスミチオンより高めなので、コガネムシへの効きが物足りないと感じたときの選択肢として位置づけるのが現実的でしょう。
オルトラン・スミチオン・フルスイングを比較
3剤の違いを一覧にすると、選ぶ基準がはっきりします。コガネムシ対策が必要かどうかが、選び方の分かれ道になります。
| 薬剤名 | 有効成分 | ヨトウ・ツトガ | コガネムシ類 | 入手性 |
|---|---|---|---|---|
| オルトラン(家庭園芸用水和剤・粒剤) | アセフェート | 対応 | 非対応 | ホームセンターで入手しやすい |
| スミチオン乳剤 | MEP(フェニトロチオン) | 対応 | 対応 | ホームセンターで入手しやすい |
| フルスイング | クロチアニジン | 対応 | 対応(残効性が長い) | 専門的な販路が中心で価格は高め |
ヨトウとツトガだけが問題ならオルトランで十分ですが、コガネムシ類幼虫が疑われる場合はスミチオンかフルスイングを選ぶ必要があります。まずは入手しやすく価格も抑えられるスミチオンを試し、効きが不十分だと感じたときにフルスイングを検討するという順番が、コストの面では合理的です。
粒剤・水和剤・液剤の違いとは
同じ有効成分でも、製品には粒剤・水和剤・液剤という流通形態の違いがあります。有効成分そのものは変わらず、散布方法と使い勝手が異なると考えてよいでしょう。
- 粒剤
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粉末が粒状に固められたもので、希釈せずそのまま散布できます。粒はすぐに溶けないため、散布後に散水して地面に浸透させると効果が安定します。
- 水和剤
-
水に溶けにくい粉末を、界面活性剤などで水に分散させやすくした製品です。水で薄めてから散布します。
- 液剤(乳剤)
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有効成分をあらかじめ液体に溶かした製品です。水和剤と同様に水で薄めて使いますが、溶け残りが少なく均一に散布しやすい傾向があります。
庭が広く手早く撒きたいなら粒剤、狭い範囲にピンポイントで濃度を調整したいなら水和剤や液剤が向いています。
まとめ
芝生の害虫駆除では、まず被害の出方から害虫を見分け、そのうえで薬剤を選ぶことが失敗を避ける近道です。ホームセンターで手に入りやすいオルトランはヨトウとツトガに強い一方、コガネムシには効きません。三大害虫すべてに対応したいなら、まずスミチオンを試すのが現実的な選択です。
ヨトウ・ツトガだけならオルトラン、コガネムシも含めた三大害虫対策ならスミチオン、スミチオンで効きが足りなければフルスイングを検討する。この順番で選べば、無駄な買い直しを避けられます。
よくある質問
- オルトランとスミチオン、どちらを先に使えばいいですか。
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被害の見た目で判断します。夜間に葉や茎が食害されていてコガネムシの心配がなければオルトランで対応できます。芝が部分的または面的に枯れて根元にイモムシ状の幼虫がいる場合は、コガネムシ類幼虫にも効くスミチオンを選んでください。
- コガネムシには何を使えば確実ですか。
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コガネムシ類幼虫にはスミチオンかフルスイングが選択肢になります。スミチオンは入手しやすく価格も抑えやすい一方、フルスイングは残効性の長さが特徴です。スミチオンで効果が不十分な場合に、フルスイングを検討するとよいでしょう。
- 芝生の殺虫剤はいつ撒くのが目安ですか。
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害虫が活発に活動する春から秋にかけてが目安とされますが、発生時期は地域や気候によって前後します。正確な時期は製品ラベルの記載や、自治体・農業関連機関が発表する発生予測情報を参考にするのが確実です。
- 粒剤と水和剤はどちらが使いやすいですか。
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広い庭で手早く済ませたいなら、希釈の手間がない粒剤が扱いやすいです。狙った範囲だけに濃度を調整して使いたい場合は、水で薄める水和剤や液剤のほうが向いています。
- フルスイングはミツバチに影響がありますか。
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フルスイングはネオニコチノイド系の農薬で、使用上の注意にも「ミツバチを放飼している地域では使用を避けてください」との記載があります。近隣で養蜂が行われている場合は、使用前に周辺への影響を確認することをおすすめします。









